「授乳時間は何分が正解?母乳育児で大切なのは“時間”ではなく赤ちゃんのサインだった」
はじめに
「授乳は片方5分ずつ」「20分かけなきゃ足りない」――そんな言葉を耳にしたことはありませんか?産院や本で教わった授乳時間の目安と、実際にお家に帰ってからの赤ちゃんの飲み方が全然違う…。
「本当にこのやり方でいいのかな?」と悩むママはとても多いです。
結論から言うと授乳時間には絶対的な正解はなく、大切なのは“何分”ではなく赤ちゃんの満足度です。
この記事では、助産師として多くのママと赤ちゃんに寄り添ってきた視点から、授乳時間の考え方や注意点をわかりやすく解説します。
1. 授乳時間に「決まり」はあるの?
出産直後は「5分ずつ」がおすすめされる理由
出産直後の赤ちゃんはまだ吸う力が弱く、すぐ疲れてしまいます。
そのため産院では「まずは片方5分ずつ、合計10分ほど」という指導を受けることが多いです。

これは次のような理由からです:
- 赤ちゃんの吸う力が弱い → 長時間吸うと疲れてしまう
- ママの乳房を両方とも刺激したい → 母乳分泌を安定させるため
つまり「5分ルール」はおっぱいを慣らすためのスタートラインにすぎないのです。
初乳期と成乳期で母乳は変化する
母乳の成分は日ごとに変わっていきます。

- 初乳(生後3〜5日頃まで)
少量で濃厚。抗体が多く含まれ、免疫を守る役割。 - 成乳(生後10日以降)
量が一気に増え、1日約780ml。乳糖や脂肪も増えて、赤ちゃんのエネルギー源に。
初乳の時期は「免疫を与える」ことが目的なので短時間授乳でも十分ですが、成乳期に入ると赤ちゃんが欲しがるだけ飲ませてOKになります。
2. 片側だけで満足する場合もある?
「片方飲んだらすぐ寝ちゃった…もう片方もあげなきゃいけない?」
よくあるママの疑問ですが、無理に両方飲ませなくても大丈夫です。
- 次回の授乳で反対側からスタートすればバランスが取れる
- 授乳時間よりも「赤ちゃんの満足度」が大切
- 1日トータルでバランスがとれていれば◎
つまり、「両方飲ませなきゃ!」と焦る必要はありません。
3. 授乳が短すぎる(5分以内)の場合のチェックポイント
授乳があまりに短時間で終わるときは、次の点を確認してみましょう。

- 両側まんべんなく吸わせる
左右交互に少しずつ。 - 母乳の勢いをチェック
勢いが強すぎて赤ちゃんがむせてしまうことも。 - 授乳後すぐにおっぱいを探すなら追加で飲ませる
- 夜間授乳を意識
昼間の授乳が短いと分泌不足につながるため、夜間はしっかり授乳を。
4. 授乳が長すぎる(20分以上)の場合のチェックポイント
逆に、授乳が長時間続く場合には次の可能性があります。
- 赤ちゃんの吸う力が弱い
- 途中でウトウトしてしまう
- くわえ方が浅くて効率よく飲めていない
改善のための工夫
- 授乳前に乳房をマッサージして流れを良くする
- 赤ちゃんが眠そうなら声をかけたり手足をさすって刺激する
- ゴクゴク飲み込む音が聞こえるかチェック
- 口元の動きがしっかりあるか観察
5. 授乳時間にこだわらないことで分泌も安定する
授乳の時間を「〇分」と決めず、赤ちゃんのペースで吸わせることは、実は母乳分泌にもプラスに働きます。
- 乳房への刺激が増える → 分泌が安定しやすい
- 差し乳へ移行しやすくなる
差し乳とは、赤ちゃんが飲むタイミングに合わせて必要な分だけ作られる母乳のこと。
この仕組みに移行すると、母乳が張りすぎたり、逆に足りなすぎたりするトラブルも減ります。
6. 「ママと赤ちゃんにちょうどいい授乳時間」の見つけ方
授乳時間に正解はなく、赤ちゃんによって飲むペースは違います。
- 飲む力が強い子 → 5分で満足することも
- ゆっくり飲む子 → 20分以上かかることも
大切なのは「何分飲んだか」ではなく、赤ちゃんがしっかり満足しているかです。
満足しているサイン
- 飲んだあとに口を離して寝る
- 手足がリラックスしている
- おしっこの回数がしっかりある
- 体重が順調に増えている
7. まとめ
授乳時間は「〇分で終わらせなきゃ!」と決める必要はありません。
大切なのは 赤ちゃんのペースを尊重すること。
- 出産直後は5分ずつでOK
- 成乳期以降は時間で区切らず、欲しがるだけ
- 片側だけでも、1日トータルでバランスが取れれば◎
- 短すぎても長すぎても、原因をチェックして対応すれば大丈夫
ママと赤ちゃんの授乳は「二人三脚」。
マニュアルに縛られるのではなく、赤ちゃんのサインを見ながら、自分たちに合った授乳スタイルを見つけていきましょう。
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